「お財布事情は厳しいけれど、クリスマスのプレゼントは贈りたい」 – これが、今年のアメリカの消費者の本音です。

アメリカでは、11月末の感謝祭からクリスマスにかけて、1年で最も買い物が盛り上がる年末商戦を迎えます。今年は家計への不安が広がる一方で、プレゼントを贈る習慣は大切にしたいと考える人が多いようです。

ショッピングセンター業界団体のICSCが9月に米国の成人1,003人を対象に行った調査では、約半数(49%)が「今年はプレゼント代をまかなえるか不安」と回答しました。それでも、約8割(78%)は「昨年と同じくらい、またはそれ以上のお金を使う」と答えています。

ICSCは、今年の年末商戦の売上が前年比4.3〜4.9%増え、1.7兆ドルを超えると予測しています。お金のやりくりに不安を感じているのに、売上は過去最高を更新する見込み。この一見矛盾しているような状況を、「物価」「借金」「買い方」の3つの視点から見ていきます。

物価 – ガソリン代の値上がりが、家計の余裕を奪っている

アメリカでは、物価の上昇ペースが再び速まっています。10月14日に発表された9月の消費者物価指数は、前年同月比で3.7%上昇。8月の3.4%から、上昇率が高まりました。

大きく影響しているのがガソリンです。ガソリン価格は9月だけで9.1%上がり、前年同月と比べると約34%高くなりました。物価上昇分の半分以上を、ガソリンの値上がりが占めています。

一方、食品とエネルギーを除いた物価の上昇率は2.6%で、比較的落ち着いています。ただし、関税やAI向け半導体需要の高まりなどを受け、パソコンやゲーム機といった電子機器にも値上がり圧力がかかっています。どちらもクリスマスギフトの定番だけに、気になるところです。

ガソリンは、給油のたびに価格を目にするものです。だからこそ、家計への負担を実感しやすく、「何もかも高くなった」と感じる一因になっています。さらに、米国の中央銀行にあたるFRBは9月に金利を引き上げ、10月28日の会合でも追加利上げが注目されています。金利が上がれば、クレジットカードの利用残高にかかる利息も増えるため、カードでプレゼントを購入する人にとっては負担が重くなります。

もうひとつ注目したいのが、売上の伸び方です。11〜12月の売上増加分の半分以上は、商品の値上がりによるものとされています。つまり、売上金額は過去最高になっても、売れる商品の数が大きく増えるとは限りません。

借金 – 全体の数字は落ち着いていても、家計の不安は残る

ICSCの調査からは、借金が年末の家計に影響していることもうかがえます。回答者の50%が「借金が年末の予算に影響する」と答え、49%は「一度に支払えない買い物のために借り入れをする予定」と回答。47%は「年末の出費のために、返済や貯蓄を後回しにするかもしれない」としています。また、23%は「今年のクリスマスの支払いが2027年まで続きそう」と答えました。仕事や雇用への不安が出費に影響すると答えた人も49%に上り、昨年の43%から増えています。

ところが、米国全体のデータを見ると、少し違う姿が見えてきます。米国の家計債務は合計18.8兆ドルと過去最高ですが、そのうち約7割は住宅ローンです。収入のうち借金返済に回している割合は、2026年4〜6月期で11.1%。リーマン・ショックのころの約16%や、2010年代の平均12.1%を下回っています。また、返済が期限どおりに行われている債務も全体の95.3%で、全体としては比較的安定しています。

では、なぜ調査では約半数が家計に不安を感じているのでしょうか。理由のひとつは、借金の大部分を「お金に余裕のある人たち」が持っていることです。住宅ローンを組めるのは、収入や信用力の高い人が中心です。2024年に平均的な価格の家を買うには、年収約12万7,000ドルが必要とされ、35歳未満の世帯で家を持っているのは4割に満たず、多くは賃貸で暮らしています。こうした持ち家世帯の多くは、コロナ禍の低金利時代に住宅ローンを組んだり借り換えたりしており、返済負担を抑えられています。借金全体の約7割を占める住宅ローンの返済が順調なため、全体の数字は安定して見えるのです。

一方で、賃貸で暮らす世帯の状況は、こうした数字には表れにくくなっています。賃貸世帯の約半数は収入の30%以上を家賃と光熱費に充てており、年収3万ドル未満の世帯ではその割合が8割を超えます。家賃を払うと手元にほとんどお金が残らない世帯では、生活費や買い物をクレジットカードや後払いに頼りがちです。実際、カードの返済が深刻に遅れる割合は、住宅ローンの4倍以上に達していて、クレジットカードの返済遅延が2011年以来の高水準になったと伝えています。

つまり、米国全体では消費を支える土台が保たれている一方、持ち家か賃貸か、収入が多いか少ないかによって、家計の余裕には大きな差があります。どの消費者に向けて商品を売るかによって、市場の見え方も大きく変わってくるのです。

買い方の変化 -「買うのをやめる」より「選び方を変える」

今年の消費者は、プレゼントそのものを減らすというより、選ぶ商品や買う場所を見直しながら、予算に収めようとしているようです。ICSCの調査からは、主に3つの変化が見えてきます。

1. 新しいブランドやお店にも目を向ける

「新しいブランドを試すつもり」と答えた人は58%、「初めてのお店で買うつもり」と答えた人は52%でした。また、25%は、より安い商品に切り替えることを考えています。いつものブランドだけにこだわらず、選択肢を広げる人が増えている今は、新しく米国市場に参入するブランドにとってもチャンスといえそうです。

2. AIは、納得して買うためのツール

年末の買い物にAIを使う予定の人は61%。昨年の47%から大きく増えました。使い道として最も多いのは価格の比較(29%)で、商品選び(19%)、在庫の確認(18%)が続きます。購入前にしっかり調べると答えた人は86%に上りました。価格や機能を比べてから買う人が増えるなか、商品情報をわかりやすく、正確に伝えることがますます重要になりそうです。

3. お店は「お得」と「楽しさ」の両方を求める場所

93%の人が、店舗で買い物をするか、オンラインで注文して店舗で受け取る予定と回答しました。Z世代では97%に達しています。また、68%は「割引や限定商品があれば、店舗に行く回数が増える」と答えており、店舗でもお得さが大きな決め手になっています。一方で、買い物を食事などと組み合わせた外出として楽しむ人は34%と、全体では一部にとどまります。ただしZ世代では48%と約半数に上り、若い世代ほど店舗を「出かける楽しみの場」としても捉えていることがわかります。

クリスマス商戦で意識したい5つのこと

今年の米国市場で大切なのは、単に価格を下げることではなく、「この値段を払う価値がある」と感じてもらえる理由を伝えることです。日本のブランドが意識したいポイントを5つにまとめました。

1. まずは「誰に届けたいか」を明確にする

比較的家計に余裕のある層と、クレジットカードに頼りがちな若い層とでは、使えるお金も買い物の基準も異なります。高価格帯の商品と手に取りやすい商品では、想定する顧客や伝え方を分けることが大切です。

2. まず試してもらえる商品を用意する

新しいブランドを試したい人が多い今、ミニサイズやギフトセットなど、手に取りやすい商品はブランドを知ってもらう入口になります。最初の購入につながるためにいかにハードルを下げられるかがポイントになります。

3. 「この値段で買う理由」と「安心して試せる仕組み」を用意する

消費者は買う前にしっかり調べ、価格に見合う価値があるかを厳しく見ています。素材や作り方、品質、使い心地など、自社の商品ならではの価値を具体的に伝えることが大切です。あわせて、初めてのブランドを試すときの「失敗したくない」という不安を減らすことも購入のしやすさにつながります。長めの保証や返品・交換期間、ギフト用の交換対応などを用意すれば、「試してみよう」と思ってもらいやすくなります。

4. AIにも見つけてもらえる商品情報にする(AIO対策)

消費者はAIを使って価格や仕様を比較し始めています。英語の商品説明、価格、在庫情報、レビューなどを正確に整え、オンライン上でわかりやすく掲載しておくことが、購入候補に入るための基本になります。

5. 店舗での体験を、ブランドとの出会いにつなげる

ポップアップストアや試食・体験イベントは、特にZ世代に商品を知ってもらう機会になります。割引や限定商品と組み合わせれば、実際に店舗へ足を運ぶきっかけにもなります。

まとめ

2026年の米国クリスマス商戦は、売上金額では過去最高が見込まれています。ただ、その背景には、ガソリン高や金利上昇によって「家計に余裕がない」と感じる消費者の姿があります。米国全体の家計債務は、返済状況だけを見ると比較的安定していますが、個々の家計の状況には大きな差があります。

消費者は買い物をあきらめるのではなく、事前に調べ、価格や商品を比べながら、納得できるものを選ぼうとしています。日本のブランドにとっては、安さだけで勝負するのではなく、「試しやすさ」と「この価格に納得できる理由」を伝えることが、新しい顧客との出会いにつながりそうです。

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出典

・ICSC「ICSC’s 2026 Holiday Intentions Survey Finds Consumers Prioritize Holiday Traditions Over Financial Pressures」(2026年10月6日)
・Retail Dive「Nearly half of shoppers are worried about affording holiday gifts this year」(2026年10月9日)
・Retail Dive「Holiday spending forecast to top $1 trillion」(2026年9月8日)
・米労働統計局(BLS)「Consumer Price Index – September 2026」(2026年10月14日)
・CBS News「September CPI report shows inflation accelerated to 3.7% as energy costs soared」(2026年10月14日)
・CNBC「Here’s the inflation breakdown for September 2026 — in one chart」(2026年10月14日)
・Kiplinger「September CPI Report Shows Inflation Remains Red-Hot: What to Know」(2026年10月)
・Statista「The U.S. Household Debt Burden Isn’t Higher Than Usual」(2026年10月8日)
・Statista「U.S. Household Debt: A Rising Tide」(2026年10月8日)
・University of Michigan「Surveys of Consumers」(2026年10月速報)
・ニューヨーク連銀「Household Debt Balances Decreased Slightly; Credit Card Delinquency Transition Rates Remained Steady」(2026年8月11日)
・ハーバード大学住宅研究センター「America’s Rental Housing 2026」(Multifamily Executiveの報道「Harvard Report: Affordability Crunch Continues」より)

※本記事は上記の報道・調査・統計をもとに独自にまとめたもので、元記事の翻訳ではありません。

Artis staff
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